単独の外的要因に自閉症の原因を求める(水銀説など)のは誤り

 すべての自閉症が遺伝的要因によってひき起こされるわけではないことは明らかです。脳にダメージを与える何らかの要因によってひき起こされる自閉症も存在すると考えてられています。
 ローナ・ウィンクは『自閉症―幼児期から青年期まで』(原著は1990年)という著作において、このような要因について「母親の風疹、未治療のフェニールケトン尿症、結節硬化症、小児てんかん、出生時の無酸素状態、脳炎、脳の外傷などを候補としてあげています。
 遺伝以外のどのような要因が脳にダメージを与えて自閉症にするのかは、決定的な結論は出ておらず、今後の解明に待つ部分が大きいと言えます。
 ただし、過去、単一の要因によって自閉症の原因を説明しようとする主張が何度か行われました。「遺伝以外にも、脳のダメージを生む要因がある」という主張には正当性がありますが、「ある原因が、直ちに自閉症に結果する」ひいては、「すべての自閉症は○○原因によってひき起こされる」という主張はまったく誤ったものです。後者に属するトンデモ説の代表的なものとして以下の二つをあげます。

・予防接種原因説
米国のバーナード・リムランド(1928年)が唱えました。リムランドは、特に3種混合ワクチンを自閉症の直接原因と考え、反対運動を展開しました。しかし、予防接種原因説は、当初から認められませんでした(リムランドは、この「予防接種原因説」を除けば、自閉症理論史の中で重要な役割を担った学者です。リムランドは、著書『小児自閉症』で「自閉症の原因は脳にある」と主張して当時の米国の心因論(「母親の育て方が悪かった」という説)を覆し、「ベッテルハイムを地獄においやった」と評され、また、アメリカ自閉症協会(the Autism Society of America)を設立しました)。

・水銀説
1998年、予防接種の注射の防腐剤に含まれていた水銀が体内に残ることが原因だとする主張です。この説を宣伝する人々は、「水銀キレート療法」で水銀を取り除けると主張しています。しかし、予防接種の防腐剤が改善された後にも自閉症の発生は減っていません。圧倒的多数の自閉症研究者は水銀と自閉症との関係を否定しています。

「母親の育て方が原因」説は全くの誤り